忘れてしまった詩

文字数 376文字

 きょうの昼間
 詩を思いついた
 夜に書こうと思った
 いまは夜
 昼間に思いついた詩を
 まったく思い出せない
 思いついたという事実しか思い出せない
 詩が逃げてしまった
 飛び去ってしまった
 自分のなかでは
 それなりにいい詩だったのに
 もう二度と思い出せないのだろうか
 少し惜しい気がする
 そして忘れた詩のついでに
 いままでに忘れてしまった
 もう二度と思い出せなくなった大切な記憶を
 もう二度と思い出せなくなった過去のすべてを
 少しどころではない痛切さで惜しんで
 日々が抹消していく瞬間の細部は
 もう二度と出会えなくなった詩のように
 もう二度と出会えなくなっただれかのように
 自分の生から断ち切られてしまったのだろうか
 涙を流すほど悔やんだとしても
 惜しむことすべてが無意味であるように
 それともまた
 いつかまた
 出会える日もあるのだろうか
 生きているかぎりは
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み