詩にはすべてがない

文字数 310文字

 詩にはすべてがない
 根拠がなく弱い

 小説には
 筋がある
 人物がある
 描写がある
 カタルシスがある
 ページの嵩による重みがある

 映画には
 男優女優のめくるめく姿態
 景色の官能
 ただよう空気感
 物音から声から劇伴まで
 あらゆる音楽がある

 詩にはすべてがない
 あるようでない
 たまらなく淡い
 人を夢中にさせる根拠がない
 とても弱い
 もちろん売れない
 必要とされない

 詩にはすべてがない
 根拠がない
 ところがなぜだか不思議なことに
 弱さにつまずく人間が
 いつもどこかで詩に出会う
 そこでなぜだか不思議なことに
 詩にはすべてがある
 と
 数式発見者みたいにつぶやく
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