死んでほしくはないが死にたい

文字数 407文字

 自殺はいのちへの侮辱なのか
 いのちへの失恋なのか
 死ぬのが悪いという理屈は
 いまだによくわからない
 死ぬのが哀しいという感情は
 よくわかる
 死んでほしくないと言われたところで
 なにも響かない虚しさも
 よくわかる
 わかるつもりの範囲内でよくわかる
 その範囲を越える理解は不可能だ
 ひとりの人間がわかることなんて
 たかが知れている
 わからないという敬意は必要だ
 わかるという暴力もあるから
 生半可な理解がもたらす絶望
 わかられたくないという切望も
 よくわかる
 わかるつもりの範囲内でよくわかる
 いいややっぱりよくわからない
 ただ死んでほしくない
 でも死にたい
 死んでほしくはないが死にたい
 他人に死んでほしくないと言うためには
 自分にもそう告げなければならないのか
 死んでほしくない
 でも死にたい
 他人のように感じる自分に
 死んでほしいと告げるためには
 他人に死んでほしくないと願うのも
 やめにしなければならないのか
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