寝床は誰のもの
文字数 504文字
風呂場で髪を洗っていると
背後のすぐそばに
何者かの気配
よくあることだ
人間も動物だから
視界を塞がれている無防備なときに
後ろを取られる危険を本能が警告する
つまるところこれは
不安の作り出した幻影だ
髪を洗い流して眼を開けた
振り返ってみると
わたしがそこに突っ立っていた
背中を流しましょうか
なんて言うこともなく
ただ風呂場のわたしをわたしが見ている
珍しいこともあるものだと思い
体を拭って髪を乾かし
寝巻を着てから布団で寝た
翌日帰るのが遅くなり
疲れてぐったりしたように家に入ると
風呂場から誰かの気配
ああそうだったそうだったと
そちらに向かってみると
思った通り
風呂場で髪を洗っているわたしの姿
しばらくそれを眺めていると
髪を洗い終えたわたしがこっちを見た
さてここまでは昨日と同じ
一仕事済ましたような気分でもう寝ようと思ったが
わたしが布団で寝たら
風呂場のわたしはどこで眠るのだろう
昨日わたしを見ていたわたしは
どこで眠ったのだろう
わたしは他人だけではなく
わたしすら押しのけて生きているのだろうか
背後のすぐそばに
何者かの気配
よくあることだ
人間も動物だから
視界を塞がれている無防備なときに
後ろを取られる危険を本能が警告する
つまるところこれは
不安の作り出した幻影だ
髪を洗い流して眼を開けた
振り返ってみると
わたしがそこに突っ立っていた
背中を流しましょうか
なんて言うこともなく
ただ風呂場のわたしをわたしが見ている
珍しいこともあるものだと思い
体を拭って髪を乾かし
寝巻を着てから布団で寝た
翌日帰るのが遅くなり
疲れてぐったりしたように家に入ると
風呂場から誰かの気配
ああそうだったそうだったと
そちらに向かってみると
思った通り
風呂場で髪を洗っているわたしの姿
しばらくそれを眺めていると
髪を洗い終えたわたしがこっちを見た
さてここまでは昨日と同じ
一仕事済ましたような気分でもう寝ようと思ったが
わたしが布団で寝たら
風呂場のわたしはどこで眠るのだろう
昨日わたしを見ていたわたしは
どこで眠ったのだろう
わたしは他人だけではなく
わたしすら押しのけて生きているのだろうか