言葉の温度

文字数 337文字

 言葉には温度がある
 発する人間の
 体温と同じとはかぎらない
 怒りが言葉を熱くするとは
 哀しみが言葉を冷たくするとは
 かぎらない
 灼熱のような言葉の塊が
 激情のみなぎる石つぶてとは
 かぎらない
 氷塊のような言葉の冷気が
 ありあまる痛みの生々しい血しぶきとは
 かぎらない
 言葉の温度が目の前の他者にとどこおりなく伝わり
 その温度に込められた意志を越えた叫びの範疇に属する声なき声がだれかに伝わるとは
 かぎらない
 言葉には温度がある
 ということが周知の事実とは
 かぎらない
 言葉には温度がある
 発する人間が
 望もうと望むまいと
 言葉には温度がある
 言葉に常温があるとは
 かぎらない
 言葉には温度がある
 心臓に由来する温もりがある
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