血の記憶
文字数 432文字
幼いころに
家のまわりをかけずりまわって
突き出た窓の尖った部分に
思いきり頭をぶつけてしまい
血が噴き出して
玄関に入って突っ伏すと
雨上がりみたいに
たっぷりとした血だまりができて
なおもどくどくと流れつづけた
でもこれはぼくの記憶の話
実際にあんな量の血が出たら
死んでいるか
死にかけていたはずだから
それほどの事態ではなかったはずだから
だからあくまで記憶の話
記憶では
ぼくは突っ伏したぼくを離れて眺めている
赤い血が止まる気配はない
鉢が割れて
中身がとめどなくこぼれていく
いつまでもおさまらない
玄関が似合わない赤にまみれていく
淵にこぽこぽと泡が立っている
中世の神学者のいうところでは
神は天地を過去において創造しただけではなく
いま現在においても創造しているとのことだ
創造とはいかなる関係もない話だが
ぼくはいま現在においても
玄関に突っ伏して
血を流しつづけていると信じている
家のまわりをかけずりまわって
突き出た窓の尖った部分に
思いきり頭をぶつけてしまい
血が噴き出して
玄関に入って突っ伏すと
雨上がりみたいに
たっぷりとした血だまりができて
なおもどくどくと流れつづけた
でもこれはぼくの記憶の話
実際にあんな量の血が出たら
死んでいるか
死にかけていたはずだから
それほどの事態ではなかったはずだから
だからあくまで記憶の話
記憶では
ぼくは突っ伏したぼくを離れて眺めている
赤い血が止まる気配はない
鉢が割れて
中身がとめどなくこぼれていく
いつまでもおさまらない
玄関が似合わない赤にまみれていく
淵にこぽこぽと泡が立っている
中世の神学者のいうところでは
神は天地を過去において創造しただけではなく
いま現在においても創造しているとのことだ
創造とはいかなる関係もない話だが
ぼくはいま現在においても
玄関に突っ伏して
血を流しつづけていると信じている