隠された傷

エピソード文字数 321文字

 傷を自慢げに見せびらかせば
 違うだれかがひっそりと傷つく
 ひっそりと
 だれもがひっそりと傷ついている
 痛みを隠すのが礼儀であり
 規範でもあり抑圧でもあるから
 そうして夜
 ひとりで傷痕を眺めて
 思いのほか深いことにおどろき
 思いのほか死にたいことにおどろく
 隠された傷は
 いつまでもひっそりと残りつづけるだろう
 なにがそれを治癒しえるのか
 魂をもてあそぶやぶ医者は
 けして信用できない
 魂は医療を必要としているが
 神は医療保険を創り損ねた
 御手は傷痕に触れてくれない
 死は
 傷を無効化するだけで
 癒してはくれない
 それともそうではないのだろうか
 死よりも優しい治癒者は
 この世に望むべくもないのか
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