モザイクへの怖れ

エピソード文字数 362文字

 テレビの画面に
 何十年も昔の映像
 過去を懐かしみ振り返る
 回顧的な番組
 映し出される観客席
 そして
 画面いっぱいを埋めつくすモザイク

 人々の顔が
 虚ろな(もや)に包まれて
 人格を剥ぎ取られたような
 (なら)された影としての人間

 靄の隣に
 顔を晒した人間
 その人間はいまもテレビに健在だから
 顔を与えられている
 他の人間は
 顔を剥ぎ取られている

 死人に顔なし
 いや もちろん死んだわけではないだろうが(死んだ者もいるだろうが)
 権利を侵害しないための配慮だろうが
 とはいえ
 こんな風にして
 過去は塗りつぶされていく

 どうか死ぬときに
 ぼくに顔が残されていますように
 誰でもない靄としてではなく
 顔のある人間として死ねますように
 ぼくがぼくのまま死ねますように
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