冬の人魚
文字数 259文字
水の凍てつく真冬の海に
魂のかじかんだ人魚が震えている
喪った声が
粉雪となって降りしきる
入水者のような憂鬱に紅顔を曇らせて
切なげに手を重ね合わせて
遠く彼方にいる彼を
手の届かない夢を想う
人魚の尾が水草のように揺れる
冬の泡沫に恋が暴れ狂う
声を喪った冬の人魚は
喪失の代償さえも得られなかったことで
こころを藍色に溶けさせていく
気づかずに流された人魚の涙に
小魚が先を争うように群がって
凍てた哀しみを呑み込んでいた
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