深海のゲームセンター

エピソード文字数 370文字

 ゲームセンターは騒がしい
 騒がしすぎて
 沈黙に似ている
 音楽や話し声が聞こえる場では
 読書に集中しきれないはずが
 不思議なことに
 ゲームセンターの喧騒の只中では
 本が読める

 ここには音があふれすぎていて
 歩きまわっていると
 深海をただよっているような気さえする
 人声も膜をかぶせられて
 魚の尾がひらめいたような声音
 そこで人が為すことも
 役には立たない遊びばかり
 図書館とゲームセンターは
 方向を違えた双子かもしれない
 少なくともどちらの空間も
 居場所のない人間には優しい

 音の消えたゲームセンターは
 なぜあんなにも墓場に似るのだろう
 遊びを目的とした空間は(とき)
 空爆されたあとのような
 殺伐(さつばつ)とした表情をちらつかせる
 またぞろ音が鳴り出せば
 水はふたたび満ちてゆく
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