からっぽ

文字数 307文字

 最近あまり詩を読んでないな
 最近あまり歌を聴いてないな
 それくらいしかすがるものはないのに
 すがることすら億劫になっている
 からっぽ
 一日中からっぽ
 からっぽに触れてくるすべてが煩わしい
 からっぽ
 なんにも触れずにからっぽ
 忘れられない記憶がよぎって
 たまに鋭く痛むだけ
 それも遠からず消えるのだろう
 自分がだれなのかとか
 自分が何歳でどんな名前だったかとか
 急速に淡くどうでもよくなってる
 人間は二度死ぬという
 肉体が死んだときと
 だれからも忘れられたとき
 肉体はまだ死んではいないが
 後の死が待ちかねて先まわりしたようだ
 自分からも忘れられて
 生がかぎりなく遠くなる
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み