頬をつねる

文字数 358文字

 フィクションの中で
 現実なのか夢なのか確かめるために
 自分で自分の頬をつねる
 という登場人物を時おり見かけるが
 それでは足りないんじゃないかといつも思う
 この世界が現実なのか夢なのか確かめるためには
 死んでみる
 ことしか
 方法はないのではないか
 でも自分の頬をつねる登場人物は
 なかなか死んでまではくれないし
 たいていの場合
 自分がフィクションという
 夢の住人であることにも気づいてくれない
 死んでさえも気づかないのかもしれない

 ぼくがいま住まうこの世界は
 現実なのか夢なのか
 どちらにせよ意味はないけれど
 それを確かめるためだけにでも
 死んでみるには充分な理由
 なのだと確信は深まるばかり
 だけど心残りと度胸のなさで
 今日のところは
 頬をつねるだけにとどめてしまう
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