死体の記憶
文字数 330文字
死体のことを思い出していた
死体は身近な人だった
死体は時が止まっていた
死体はまだ髪も爪も伸びつづけているはずだが
死体は時が止まっていた
死体は身近な人だった
死体は春の終わりに現れた
死体は病院と通夜と葬儀に現れた
死体は人形のような顔をしていた
死体は意外なほど小柄に見えた
死体は周囲に白い花を敷き詰められていた
死体は身近な人だった
死体は棺に閉ざされた
死体は車に運び去られた
死体は小窓から別れを告げた
死体は燃やされていなくなった
死体は身近な人だった
死体はぼくの未来だった
死体になるまでこの死体のことを忘れないでおこうと思った
死体が死体ではなかった頃の静かで寂しい笑顔を忘れないでおこうと思った
死体は身近な人だった
死体は時が止まっていた
死体はまだ髪も爪も伸びつづけているはずだが
死体は時が止まっていた
死体は身近な人だった
死体は春の終わりに現れた
死体は病院と通夜と葬儀に現れた
死体は人形のような顔をしていた
死体は意外なほど小柄に見えた
死体は周囲に白い花を敷き詰められていた
死体は身近な人だった
死体は棺に閉ざされた
死体は車に運び去られた
死体は小窓から別れを告げた
死体は燃やされていなくなった
死体は身近な人だった
死体はぼくの未来だった
死体になるまでこの死体のことを忘れないでおこうと思った
死体が死体ではなかった頃の静かで寂しい笑顔を忘れないでおこうと思った