朝の疑念

文字数 372文字

 朝が朝ではないような
 そんな目ざめがときにある
 嘘くさい陽光
 ビープ音のような鳥のさえずり
 違和感でしかない冷気
 窓は世界を覗かせてくれるが
 すべてが仮象(かしょう)に見えてしまう
 その窓は本当に窓なのか
 死霊(しりょう)の見せる鏡ではないのか
 朝が朝ではないことを
 なにものかが糊塗(こと)してはいまいか

 夢のなかにいるあいだは
 なんの疑いも持たなかった
 風景はとどこおりなく展開し
 脳裏(のうり)に仮象をめぐらせて
 流れのまにまに浮かんでいた
 夢に慣れたその身体が告げる
 ここは断じて夢ではないと
 朝に慣れたその身体が告げる
 けれど断じて朝でもないと

 朝が朝ではないのなら
 窓が窓ではないのなら
 わたしはわたしなのだろうか
 わたしがわたしではないことを
 なにものかが糊塗してはいまいか
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