ラストシーン

文字数 306文字

 ラストシーンが好きだ
 たとえば映画
 登場人物はなにを喪いなにを得たのか
 時間の重みと鮮明な風景
 それはもともとつぎはぎされた景色
 演じられただけの人物像
 バラバラだったものを糸でつなげた
 空気の流れる絵巻物

 ラストシーンが好きだ
 たとえば小説
 言葉の連なりは語り手をどこへ運んだのか
 白熱化した散文のそこかしこに散らばる詩
 それはもともとかき集められた記号
 文字上にだけ浮かんだ幻
 細く弱く薄いありものを糊で固めた
 観念の迸る絵巻物

 自分の死も
 好きになれるだろうか
 どんなに情けないラストシーンでも
 現実であるという以外に
 なんらの優位性も持たないラストシーンでも
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み