無人島という仮定

文字数 559文字

 無人島に持っていきたい本
 そんな設問を時おり目にする
 本だけの話ではないが

 無人島に行くならもっと必要なものがあるだろ
 そんなふうに
 設問自体を否定することもできるが

 無人島という仮定によって
 どんな答えを引き出そうとしているのか?
 つまり
 孤独を耐え抜く武器として
 役立つものを教えろと言っている

 無人島に持っていく本
 そこに求められるのは
 どれだけ読んでも飽きないということ
 それにある種の網羅性
 ここにすべてがあるというような
 そんな感覚を抱かせる本
 人間のすべて
 世界のすべて
 もちろんそんなものが一冊の本に収まるはずはないので
 あるような気がするという
 錯覚くらいがせいぜいなものだ
 錯覚だけでも大したものだ
 そんな本を愛せたらいいな

 本ではなく
 人を選ぶとしたら
 そこに求められるのも似たようなことなのだろうか
 いつまで一緒にいても飽きない
 この人にすべてがあるというような
 そんな感覚を抱かせる人
 しかしまあ
 本と人は違うので
 無人島で二人なんてごめんだと
 否まれるのが当然だろうし
 そうでなくても
 実際に暮らしてみたら
 殺し合いになっちゃったとか
 そんな結末もありそうなものだ
 しかしまあ
 そんな人を愛せたらいいな
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