生き残った金魚

文字数 314文字

 子どもの頃に飼っていた金魚
 なんの愛情も抱かなかった
 水槽の水を換えるのも
 餌をあげるのも
 ただ面倒なだけだった
 お祭りの金魚すくいでとってきて
 なんとなく飼い始めた
 もとは四、五匹いたはずだけど
 他の金魚はすぐに死んでしまって
 一匹だけしぶとく何年も生きていた
 金魚がいつ
 どんな死を迎えたか
 不思議と印象に残っていない
 庭に埋めたような気もするが
 生命についてなにも学ばず
 かわいがった覚えもない
 飼っていたことすら普段は忘れている
 それでもときどきあの金魚を思い出すと
 懐かしさと申し訳なさを感じる
 窓辺に置かれた水槽で
 愛をそそがれず時間に揺蕩っていた
 孤独な金魚のサバイバー
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