死の話

文字数 490文字

 生きることに価値はないと
 個人的には納得できた
 あとは死だ
 死ぬことに価値はあるか
 死に価値があるのなら
 無価値な生も
 救われるのではないか
 大義のために殉死するとか
 そういう話ではない
 そういう話とはいっさい関係がない
 何の役にも立たず誰の愛にも恵まれなかった
 そう感じながら終わる生が
 救われるかどうかの話だ
 未決の生の可能性についてだ
 救済不可能をどうにかする話だ
 遺された者たちが死を納得するための方便とか
 そういう話ではない
 そういう話にはしたくない
 死んでいく当事者自身の救いについてだ
 知られもせず気にもかけられない死の瞬間のその当人の魂についてだ
 天国とか神の国とか永遠なる浄福とか
 そういう話ではない
 そういう話になってしまうのか?
 そういう話にはしたくない
 そういう話にはしたくないんだ
 死ぬ人間の話だ
 死後の人間の話ではない
 死ぬ人間についてなんだ
 それをどうにかしたいんだ
 どうすればそのことを話せるんだ
 どうすれば死について話せるんだ
 なにも話せないじゃないか
 自分が死のうとしたところで
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