老人と丘
文字数 464文字
だれもが時を背負っている
そのことをつい忘れてしまう
だれもが朽ちてゆく過程の真っ最中
そのことをつい無視してしまう
見てごらん
しなびた枯れ木があるだろう
あれがおれだ
おまえの祖父だ
そしておまえだ
わかりません
ぼくにはわかりません
丘を風が渡っていた
老人が歌を口ずさんだ
子どもが枯れ木を蹴飛ばした
もうすぐ死んでしまう犬が吠えた
考えてごらん
無力を王冠として授かった
それがおまえの人生だ
おれの虚無だ
時の使命だ
わかりません
ぼくにはわかりません
丘はいまでは見るかげもない
切り崩された
均された
駐車場という名の墓場になった
注意しろ
過去はまたたくまに去っていく
丘がいまでは消えたように
おれがいまでは死んだように
おまえがいずれ死ぬように
わかりません
ぼくにはわかりません
いまではよくわかっていた
そのときもわかっていたのだ
老人よりもわかっていた
老人はわかっていなかった
死んでしまった犬が吠えた
そのことをつい忘れてしまう
だれもが朽ちてゆく過程の真っ最中
そのことをつい無視してしまう
見てごらん
しなびた枯れ木があるだろう
あれがおれだ
おまえの祖父だ
そしておまえだ
わかりません
ぼくにはわかりません
丘を風が渡っていた
老人が歌を口ずさんだ
子どもが枯れ木を蹴飛ばした
もうすぐ死んでしまう犬が吠えた
考えてごらん
無力を王冠として授かった
それがおまえの人生だ
おれの虚無だ
時の使命だ
わかりません
ぼくにはわかりません
丘はいまでは見るかげもない
切り崩された
均された
駐車場という名の墓場になった
注意しろ
過去はまたたくまに去っていく
丘がいまでは消えたように
おれがいまでは死んだように
おまえがいずれ死ぬように
わかりません
ぼくにはわかりません
いまではよくわかっていた
そのときもわかっていたのだ
老人よりもわかっていた
老人はわかっていなかった
死んでしまった犬が吠えた