こぼれたもの

エピソード文字数 362文字

 お酒でもコーヒーでもミルクでもいいけれど
 匂いのついた液体をぶちまけてしまったときの
 あの後ろめたさはなんだろう
 本来は人を楽しませるはずの香りが
 不快なものと成り果てて
 地縛霊のようにその場にこびりついてしまう

 戦場を映した映像を見ていたら
 頭を撃ち抜かれてとめどなく血を流しながら
 搬送されていく人がいた
 流れるべきではない場所から流れる液体の
 あの取り返しのつかなさはなんだろう
 バケツの底が抜けたように
 どぼどぼと中身がこぼれていく
 そのうつろな眼が忘れられない
 そんな勢いでこぼれてしまったら
 頭がすっからかんになるじゃないかと思い
 画面の向こうから
 血の匂いがただよってきた
 いまもこびりついている

 当たり前のことだけど
 こぼれてしまったものは
 もう二度と戻らない
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