勝手な共鳴者

エピソード文字数 621文字

 助けを求めて叫んだって
 だれも助けに来てくれない
 それがこの世の現実だろうし
 人間の限界かもしれないけれど
 あなたのこころのどうしようもない叫びに
 共鳴させてはもらえないだろうか
 隣でうなずいてはいけないだろうか

 わたしはあなたを知らないし
 あなたもわたしを知らないだろう
 わたしはあなたを助けられないし
 あなたもわたしを助けられないだろう
 言葉と想像力を通してしか
 わたしとあなたはつながっていない
 なんらの関係も持っていない

 わたしはただ
 あなたの痛みを想像するだけだ
 あなたのだれにも伝わらない痛み
 あなたが胸に隠しつづけている痛み
 あなたを挫き
 あなたを諦めさせ
 あなたを無感覚にする
 あなたの過去に刻まれた痛み
 あなたの生存に埋め込まれた痛み

 もしもあなたに余裕があれば
 わたしの痛みを想像してほしい
 他人の痛みを想像することは
 少しは慰めになるだろうから
 だけどきっと
 あなたには余裕がないだろう
 急迫する痛みは
 あなたの優しさを蝕むだろう
 助けを求めて叫んだって
 だれも助けに来てくれないのだから
 そんな残酷な光景を
 残酷だと言うことすら許されずに
 ずっと見せつけられてきたのだから

 ただ
 人間の孤独は救えなくても
 痛みの孤独は和らげられる
 そんなふうにも思うから
 あなたのこころのどうしようもない叫びに
 勝手に共鳴する者を許してほしい
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