怒りの詩

エピソード文字数 419文字

 怒りとは侘しい孤独
 怒りとは煤けた錯誤
 この世には怒るほどのことなどなにもない
 それでも怒るというのなら
 世界のすべてを憎悪しなければならない
 光の粒子
 湖の波紋
 鳥の帰巣
 すべてを罵りつくさねばならない
 塵界(じんかい)の頭蓋を粉々に打ち砕かねばならない
 怒りの蒼褪(あおざ)めた隻腕(せきわん)
 天使の羽根のひとひらすら
 指先だけで()り潰してしまう
 怒りとは(かそ)けき卒塔婆
 怒りとはめくるめく墓碑銘
 最初の人間が抱いた怒りは
 空への怒り
 天への殺意
 なぜこの世にわれをあらしめたかと
 丘の頂上で慟哭(どうこく)した
 歴史に汚染されない眼で
 半欠けの月と
 群小の星と
 荒ぶった闇に
 語りかける
 (かかと)から伝わる緊張が
 大地と天を媒介して
 丘の上の聖者の怒りは
 天蓋を揺らし
 雲を裂き
 星座の配列をどよめかせるほどに
 屹立(きつりつ)した叫びを叫んでいる
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