記憶は優しい海だから

エピソード文字数 216文字

 記憶は優しい海だから
 溺れてしまっても悔いはない
 魚の鱗に過去がある
 沖合いに浮かぶ舟は
 忘れてしまったかけらを探している
 もう何十年も

 記憶は優しい海だから
 呑まれることをおそれはしない
 たださざ波の
 淡い感情の震えだけは
 いまでも胸底(むなそこ)に新たな傷をつける
 もう何十年も

 記憶は優しい海だから
 アクアマリンの寂寥だから
 荼毘(だび)に付されるぼくの眼にも
 ひとしずくの生前が残るだろう
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