秋の哺乳類

エピソード文字数 368文字

 どうやら秋が来るようだ
 夏も春もまだ捨てていないのに
 そうやってぼくは
 周回遅れの季節を追いかけている
 涼しい風が吹きはじめても
 ぼくに届くのは
 何年も前に過ぎ去った秋
 子どものころに死んだ秋

 過去がいつでも予感の春なら
 未来は常に閉ざされた冬
 それは昨日のぼくの論理
 明日のぼくは
 秋の哺乳類
 古びた夏空を手箱にしまう

 秋
 転写された季節
 ぼくが西暦何年の季節を生きようが
 葉は色づいて枯れていく
 秋
 ぼくの後ろ向きな憧れ
 喪うことへの全力の拒絶
 黄色い未練
 秋
 不変の静けさ
 迂遠な寂しさ
 無辺の死にたさ
 秋

 きっとたぶん大丈夫だから
 狂わなくても優しくなれるから
 眠れなくても眼は閉じられるから
 恋が消えても忘れないから
 だからもう
 きみは秋の顔をしていいよ
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