他者としての階段

エピソード文字数 264文字

 幼いころは背丈が低いので
 階段を這うように昇り降りした
 一段一段に手をついて昇っていたとき
 階段はひどく近かった
 親しい他者のように現前していた
 いまでは単なる通過点として以上に
 意識に上ることは稀だ
 他者のように存在していた階段は
 書割のような背景に遠のき
 脆弱にしか存在しなくなった
 足を踏み外して転んだり
 持ち運ぶのが困難な荷物があったりするときに
 障害としての他者性を見せることはあるけれど
 そんなよそよそしい一面ではなく
 もっと柔らかな相貌が階段にはあったと
 幼時の記憶がささやいている
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