あまねき老人

文字数 227文字

 劣っていく
 一日前の自分より
 劣っていく
 小指はしなやかさを失い
 歩くリズムは微細に乱れ
 声は少しだけ低くなる
 劣っていく
 ひからびる成長速度で
 劣っていく
 最後の日
 しぼんだ柿みたいな
 劣ることを極めた肉体
 皺に残された精神
 それでも
 死を演じきるという点において
 子どものように若やいだ老人
 初源に近づいた幼い老人
 (よわい)を無効化した中性の老人
 いくつになって死のうとも
 死ぬときの(かお)はみんな老人
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