彼の人を待つ

エピソード文字数 389文字

 人は待つことで女性になる
 フランスの哲学者はそう言っていた
 その言葉に従うのなら
 ぼくはいまではまるっきりの女性だ
 待つことだけがぼくの人生だ

 待ちつづけて待ちつづけて
 こころが根腐(ねぐさ)れを起こしそうだ
 誰にも気づかれないまま枯死(こし)してしまいそうだ
 もしも 枯木より存在感のないくたびれた屍体が
 秋空の下に佇んでいたとしたら
 それはぼくだと考えてほしい
 焦がれ死にした木偶(でく)(ぼう)だと考えてほしい

 待つことで人が女性になるのなら
 待たれることで人は何になるのだろう
 きっと男でも女でもない
 若者でも年寄りでもない
 人ですらない
 神のような得体の知れないなにかとなって
 待つ人の内側で膨らんでいくのだろう

 待つ人は女性になり
 待たれる人は世界になる
 フランスの哲学者は
 そうは言わなかったかもしれないけど
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