恋の遺跡

文字数 220文字

 あの人とよく会っていた場所を通ると
 胸に鋭い痛みが走る
 いまではそこはもう
 祝福された空間ではない
 それでもぼくは
 聖堂に足を踏み入れたような敬虔な気持ちを抱いて
 痛みとの距離を測りながら
 かつてはあんなにも好ましかった場所を
 親しげな憂鬱と並んで散歩する
 住まう人を失った
 朽ち果てた恋の遺跡を探って
 まだ生きているような木乃伊(みいら)
 火を焚いた跡や
 神聖文字で書かれた恋歌などを
 時おり発掘したりする
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