時の琥珀

エピソード文字数 289文字

 幸せだった自分はいまも幸せに耽っている
 哀しんでいた自分はいまも哀しみに浸っている
 ごきげんよう、過去の自分たち
 きみたちはいまもその瞬間を生きている
 琥珀のなかの虫のように静止している
 公園のベンチで胸を躍らせて人を待っていた自分
 霊安室でぼんやりと遺体を眺めていた自分
 降りしきる雪に友達と狂喜してはしゃぎまわっていた自分
 地面が崩れ落ちたような敗北感に打ちひしがれて帰り道を歩いていた自分
 上昇であれ下降であれ
 きみたちはいまも感情の絶頂だ
 きみたちはいつまでも消え失せることはない
 時に刻まれた瞬間は
 死せることのない永遠として琥珀に残される
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