何を見ても何故だか暗くなる

文字数 278文字

 子どもはしきりに
 なにかを報告したがる
 今日が誕生日なの
 と人懐っこい女の子に言われた
 何才になるの?
 と訊き返した
 四才
 と言って
 両手の指を四本ずつ立てた
 それだと八才だよ
 と言うと
 不思議そうに眼を丸くして
 けらけら笑った

 この子がおばあさんになっても
 自分の誕生を素直に祝福できるような
 そんな世の中だったらいいのになと
 なにを見ても暗くなる自分は
 子どもを見てさえ相変わらずだった
 何を見ても何かを思い出す
 ヘミングウェイの短篇の題だ
 何を見ても何故だか暗くなる
 自分につきまとう憂鬱の(しるし)
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