帰らぬ秋
文字数 354文字
帰らぬ秋を
言葉で呼び戻せるだろうか
生涯に一度きりの秋
神の肋骨 を瞥見 したような季節
光は柔らかく
雨は幽 けく
鬼が殺された後のような
嘆きの風が吹いていた
紅葉 と枯葉 のシンフォニー
秒刻みに痙攣 しつづける黄昏
人々から顔が喪 われ
歩く墓石 のように並木道をただよう
そうして秋は
放逐 された死と手に手をとって
すれ違いざまに息を吹きかけて通りすぎていった
秋は
もうぼくを忘れてしまったか
秋は
振りかえることを禁忌のように怖れているのか
叩き折られた指でアルバムをめくりながら
無感動な血で記憶を汚しながら
帰らぬ秋を
ぼくは待っている
言葉で呼び戻せるだろうか
生涯に一度きりの秋
神の
光は柔らかく
雨は
鬼が殺された後のような
嘆きの風が吹いていた
秒刻みに
人々から顔が
歩く
そうして秋は
すれ違いざまに息を吹きかけて通りすぎていった
秋は
もうぼくを忘れてしまったか
秋は
振りかえることを禁忌のように怖れているのか
叩き折られた指でアルバムをめくりながら
無感動な血で記憶を汚しながら
帰らぬ秋を
ぼくは待っている