焼きついたもの
文字数 367文字
彼女の面影はいついつまでも
消えなかった
眼の奥底に取り憑いたまま
離れることはなかった
彼女の静謐 な残響が
耳朶 を震わせる
彼女の死にたがるようなささめごとが
こころに書きつけられる
印 のごとく彼女の存在は
ぼくの薄っぺらな五体に焼きつけられている
彼女と親しくなったときから
ぼくの記憶は果実の核のように
彼女を中心として組み直された
彼女と会えなくなったときから
ぼくの記憶は人生における死のように
彼女を絶対の余白として組み直された
眼が潰れてしまっても
彼女の面影だけはぼくのものだ
こころが反古 のように引き裂かれても
彼女のささめごとだけはぼくのものだ
死にたがっていた彼女の
明るく寂しい声の記憶は
墓場の下にあってもぼくのものだ
消えなかった
眼の奥底に取り憑いたまま
離れることはなかった
彼女の
彼女の死にたがるようなささめごとが
こころに書きつけられる
ぼくの薄っぺらな五体に焼きつけられている
彼女と親しくなったときから
ぼくの記憶は果実の核のように
彼女を中心として組み直された
彼女と会えなくなったときから
ぼくの記憶は人生における死のように
彼女を絶対の余白として組み直された
眼が潰れてしまっても
彼女の面影だけはぼくのものだ
こころが
彼女のささめごとだけはぼくのものだ
死にたがっていた彼女の
明るく寂しい声の記憶は
墓場の下にあってもぼくのものだ