不幸の産物

文字数 301文字

 たしかボルヘスがどこかで
 詩や小説はすべて
 不幸の産物だと
 言っていたような気がする
 すべてとは言っていなかったかな
 まあどっちでもいい
 とにかくそんな記憶がある

 痛みが耐えがたい時に
 こころを慰めてくれた本は
 たしかにどこかしら
 不幸の(おもかげ)が漂っていた
 強く深く
 刻まれた痛み

 ぼくの書くものに
 ぼくの不幸はあらわれているだろうか
 ぼくに不幸があるだろうか
 不幸と呼べるほど大層なものだろうか
 ぼくの不幸が産んだものに
 他人を慰めるようななにかがあるだろうか
 すこぶる疑問だった
 少なくとも
 自分のこころぐらいは
 慰められると信じていたのに
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