痛みはどうしようもない

エピソード文字数 686文字

 この痛みをどうすればいいのか
 ずっともてあましながら考えてきたけど
 どうしようもない
 ということだけしかわからなかった

 どうしようもない
 痛みは
 喪われたものは
 かえってこないのだから
 なにが悲しいってこれほど悲しいことはない
 と戦前の詩人も言っていたように
 なにが哀しいってこれほど哀しいことはない
 と生前の病人も思っている
 本当に本当にどうしようもない
 時間が経てば消えるとか
 なにかに没頭すれば忘れるとか
 全部全部むだだった

 でもそれが正論なのだろう
 きっとまだまだ時間が足りないのだろう
 いったいどれだけ必要なんだ
 老衰で死ぬまでに間に合うのか?
 長生きするとも思えないけど
 どれだけ生きても痛みそうだ
 忘れる技術をつかみそこねた
 だれか教習所で教えてくれ
 いいややっぱり教わりたくない
 忘れるくらいなら死んだほうがマシだ
 それは何度も考えた
 いまも変わらずそう思ってる

 どうしようもない
 死ぬしかない
 でも死んだ後も消えなかったらどうしよう
 神も魂も信じるが
 自分だけは無になりたい
 死者へ祈りは捧げるが
 自分だけは無になりたい
 いますぐにでも無になりたい
 それしか叶えたい望みはない
 喪われたものがかえってくるなら?
 そんな夢見はなおさら痛い
 痛むくらいなら無になりたい
 無になれるならいますぐ死にたい

 どうしようもない
 痛みは
 どうしようもない
 喪われたものは
 どうしようもない
 死んでしまうのは
 本当に本当にどうしようもない
 全部全部どうしようもない
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