明日をだれかに
文字数 515文字
ぼくはなんてからっぽなのだろう
そこそこの歳月生きてきたのに
なにも身につかなかった
だれにもなにも与えられなかった
でももしやり直せたとしても
きっと同じことだろうな
同じようにぼくは十二で世界から切り離されて
それからはからっぽで生きるのだろうな
もはやその生き方しか想像できない
終わる前は満たされていたはずなのに
まるで他人の生涯みたいだ
ぼくがもっとも幸福だった時代は
もはや別人の記憶としか思えない
彼女と出会って
自分にも燠火のように生命が残っていると思えたが
その残り火も自ら消してしまった
こころが灰になったとき
肉体はなぜ後を追わないのだろう
朝起きて
自分がまだ存在していることに
いまさらながらに驚いてしまう
明日が来てほしいと思えなくなって
どれだけの歳月が経つだろう
ぼくの明日は
今日死んだだれかにプレゼントしよう
だから明日よ
もう来ないでくれ
ぼくは今日だけで充分だ
ぼくは眠りだけで充分だ
ぼくの人生はもう充分だ
からっぽなぼくは
すでに充分透けているから
お願いだから空白を上塗りしないでくれ
無意味に無意味を重ねないでくれ
そこそこの歳月生きてきたのに
なにも身につかなかった
だれにもなにも与えられなかった
でももしやり直せたとしても
きっと同じことだろうな
同じようにぼくは十二で世界から切り離されて
それからはからっぽで生きるのだろうな
もはやその生き方しか想像できない
終わる前は満たされていたはずなのに
まるで他人の生涯みたいだ
ぼくがもっとも幸福だった時代は
もはや別人の記憶としか思えない
彼女と出会って
自分にも燠火のように生命が残っていると思えたが
その残り火も自ら消してしまった
こころが灰になったとき
肉体はなぜ後を追わないのだろう
朝起きて
自分がまだ存在していることに
いまさらながらに驚いてしまう
明日が来てほしいと思えなくなって
どれだけの歳月が経つだろう
ぼくの明日は
今日死んだだれかにプレゼントしよう
だから明日よ
もう来ないでくれ
ぼくは今日だけで充分だ
ぼくは眠りだけで充分だ
ぼくの人生はもう充分だ
からっぽなぼくは
すでに充分透けているから
お願いだから空白を上塗りしないでくれ
無意味に無意味を重ねないでくれ