この人だれなの

文字数 543文字

 生きるのやめよう
 いつも思う
 この人だれなの
 いつも思う

 だれが生きてるのだろう
 これはだれなのだろう
 自分ということに
 なっているらしい
 でもだれなのかわからない
 それはあなたのことですよ
 本当ですか
 びっくりする
 そのびっくりしているのもだれなのかわからない
 どんどんどんどん離れていく
 自分ということになっているらしいだれかまで
 硝子が十重二十重
 アキレスと亀のように縮まらない距離
 曇ってぼやけて豆粒みたいだ
 あの豆粒が自分らしい
 豆粒が笑ったり話したりしてるらしい
 豆粒が息をしてきょうも歩く
 このつまらない映像
 まだ見つづけなければならないんですか
 硝子の向こうのあれが何をしようと
 どうでもいいとしか思えません
 車に乗っていると
 窓の向こうに現実感がなくて
 異世界を漂っているような気がします
 事故にでも遭って
 窓硝子が砕けたら
 少しは現実感もわくかもしれませんが
 自分ということになっているらしいあの乗り物にも
 事故かなにか起きて死ねば
 この十重二十重の硝子も砕けて
 ああ自分だ
 なんて思えるのでしょうか
 それとも死ぬときも
 硝子は砕けずそのままなのでしょうか
 自分
 死
 なんて遠いんだ
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