哀しみを防ぐ傘はない

エピソード文字数 272文字

 空から哀しみが降ってきて
 そうしてそれを防ぐ傘はない
 そうなんだ残酷なことに
 それを防ぐ傘はない
 哀しみは雨樋(あまどい)を伝って流れ落ち
 そうして立ちつくしていた貧者を濡れ鼠にする
 椿の花も桜の花弁も
 哀しみをたっぷりと含んで落下し
 長靴もレインコートも
 そぞろに濡れつくす五体を守らない
 富者だと信じられていた者たちが貧者へと横滑りする
 そうしてそれを防ぐ傘はない
 網代木(あじろぎ)は魚を牢獄(ひとや)に放り込む
 警邏(けいら)罪人(つみびと)を手ひどく撲殺する
 そうしてそれを防ぐ二十一世紀初頭の傘はない
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み