ピアニストが知らせたもの
文字数 501文字
ある有名なピアニストが弾いた静かな曲
聴いていると
穏やかで優しい気持ちになる
ある無名のピアニストが弾いた同じ曲
なんということだろう
ゆっくりとしたテンポは同様なのに
内に秘めたただならぬ緊張
静かということは
必ずしも優しいとは限らない
牙をむいた猛獣の正面にいるような静寂もある
ピアノの音が鳴るたびに
冥府への螺旋階段を降りていくような下降感
首を絞める輪が徐々に狭まっていくような窒息感
演奏者の解釈によって
演奏者の感情によって
同じ旋律でも千変万化する音楽
なんということだろう
生まれたときに予感していたよりも
この世は底深くて面白いぞ
知らせなくちゃ
毎日絶望している自分と
毎日絶望しているだれかに
このことを知らせなくちゃ
無名のピアニストの絶望を知らせなくちゃ
絶望が共鳴することで訪れる希望を知らせなくちゃ
解釈によって千変万化する魂と世界の震えを知らせなくちゃ
今日と明日は同じように見えて二度と戻れない裂け目を孕んでいるという事実を知らせなくちゃ
木の葉一枚すらにも宿る神の息吹きを感じるための解釈を知らせなくちゃ
聴いていると
穏やかで優しい気持ちになる
ある無名のピアニストが弾いた同じ曲
なんということだろう
ゆっくりとしたテンポは同様なのに
内に秘めたただならぬ緊張
静かということは
必ずしも優しいとは限らない
牙をむいた猛獣の正面にいるような静寂もある
ピアノの音が鳴るたびに
冥府への螺旋階段を降りていくような下降感
首を絞める輪が徐々に狭まっていくような窒息感
演奏者の解釈によって
演奏者の感情によって
同じ旋律でも千変万化する音楽
なんということだろう
生まれたときに予感していたよりも
この世は底深くて面白いぞ
知らせなくちゃ
毎日絶望している自分と
毎日絶望しているだれかに
このことを知らせなくちゃ
無名のピアニストの絶望を知らせなくちゃ
絶望が共鳴することで訪れる希望を知らせなくちゃ
解釈によって千変万化する魂と世界の震えを知らせなくちゃ
今日と明日は同じように見えて二度と戻れない裂け目を孕んでいるという事実を知らせなくちゃ
木の葉一枚すらにも宿る神の息吹きを感じるための解釈を知らせなくちゃ