忘却要請

文字数 213文字

 思い出した
 なにかを
 なにを?
 気づくのをおそれるように
 なにを思い出したかを忘れた
 忘れたことにした

 たびたび思い出す
 きょうも
 突然それはやってきて
 固まりそうになり
 救助隊のように即座に
 忘却を要請して
 口から望まない呻きがこぼれるのを防ぐ

 思い出す
 それが
 鈍器の一撃よりも
 脳を揺らすということ
 忘れる
 常に思い出していることを
 忘れたことにして
 夜まで持ちこたえる
 痛みが無限につづく夜
 朝が来ない
 光がないから
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