恥ずべき魂

文字数 342文字

 虐殺の記録を読んでいると
 自分が分裂しながらその場を想像していることに気づく

 一方の自分は殺された側
 為すすべなく理不尽にその命を刈り取られた
 哀れな魂の側に身を置いて
 一方の自分は殺した側
 人間が持ち得る残虐性の限りを尽くしたような
 哀れな魂の側に身を置いて
 余りの部分は
 その悲惨を傍観している
 鼻持ちならない神のような
 哀れな魂の側に身を置いて

 そうして
 すべてを他人事のように眺める限りにおいては
 すべての人間を哀れと一括りにして
 慈悲深い神のような満足感を簡単に得られるのだから
 ぼくの魂は
 余りの部分がその大半を占めており
 どうしようもなく傍観するしか出来なかった人々よりもなおいっそうに
 鼻持ちならない恥ずべき魂でしかないのだ
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