素晴らしい音楽と愚かしい言葉

文字数 483文字

 いまでも繰り返し何度も聴く
 素晴らしい音楽をかつて生み出した人が
 いまでは繰り返し何度も言う
 愚劣なことを
 差別的なことを

 そのことをどう考えていいのか
 いまでもよくわからない
 作品と人柄は別だ
 まずはそう考える
 時の流れで腐りきったのだ
 そんなふうにも決めつける
 こちらにはうかがい知れない深謀遠慮があるのだ
 そんなふうにも擁護する
 でも許せない
 あれほど優しい音楽を生み出した人が
 人の痛みを侮辱して吐き捨てた言葉を

 いまでも魂を揺さぶる音楽
 それをかつて生み出した人が
 口汚く人を罵り
 むき出しの蔑視をあらわにし
 鼻持ちならない思想を喧伝し
 臆面もなく自画自賛し
 言動のことごとくが
 醜悪にさえ見えてしまうとは
 いったいどういうことだろう

 いまもまた
 かつてその人が生み出した音楽を聴き
 相変わらずこころを揺さぶられて
 そうして
 ひどく哀しくなる
 こんなにも素晴らしい音楽と
 あれほどに愚かしい言葉が
 どうしても結びつけられない
 人間は矛盾するものだと
 わかってはいても
 わからない
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