だれも死ななかったみたいな日常

文字数 306文字

 人間が死んだ日を思い出す
 それは毎日のことではあるけど
 気づける日なんてほとんどない

 一斉に死んだのではなく
 ひとりひとりが個別に死んだ
 その孤独を
 いまだに理解できない

 死の切実さは
 すぐに遠ざかる
 砂は
 握りしめてもこぼれる

 日常は裂けない
 人が死んでも
 日常はびくともしない
 変わらない
 不思議と

 だれも死ななかったみたいな日常

 死に意味がない日常は
 生の意味すら否定している

 人間に他人の死を意味づける権利はない
 他人の生も

 こびりつけられた意味は痛ましい

 無関心が日常を支える
 日常をやり過ごす方法は
 他にないから

 なにもわからない
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