時計塔の崩壊

エピソード文字数 264文字

 街の中心の時計塔が
 ゆっくりと崩れていく
 住民たちの自慢の景勝地
 古い伝統の象徴たる時計塔が
 心臓を射貫(いぬ)かれた竜のように
 おもむろに崩れていく
 小高い丘の城から見下ろしている鳥の群れは
 獲物が死ぬのを眺めるような好奇の眼
 時計塔の真下で見上げている人々は
 死がほとんど確定されたというのに
 時が止まったような無表情
 津波の直前の静けさにも似た
 冥府が横顔を覗かせるひととき
 日常が裂けながら憩うあわいの時間
 時計の針が臨終に指しているのは
 ちょうどぞろ目の十二時十二分
 真っ昼間の崩壊劇
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