正午の記憶

文字数 232文字

 好きなのは
 夜明け時
 夕まぐれ
 丑の刻
 光の無遠慮な真っ昼間は
 あまり好きだとは思えない
 そう感じているはずなのに
 ときどき昼間が愛おしくなる
 風に揺れているカーテンだったり
 陽光にまどろむ猫だったり
 ひと息つくためのコーヒーだったり
 昼間は昼間の優しさがある
 なぜそれを
 いたずらに拒んでしまうのか
 白昼への不信感は
 いかなる蹉跌(さてつ)が用意したものか
 答えのささやかな切れ端を
 自分はもちろん知っている
 居場所がどこにも見当たらなかった
 痛みに満ちていた正午の記憶
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