慰霊碑

文字数 471文字

 哀しみが
 あとからあとからこみ上げてくるから
 記憶が
 いつまでもいつまでも痛みつづけるから
 この感情をどうにかしないうちは
 死ねない気がしている
 もちろん死は
 待ってはくれない
 しかし猶予も
 なくなってはくれない
 それなら生きてるうちにやることは
 この消えてくれない感情を
 詩や物語に書きかえて
 だれかに伝えるだけだ
 あまりにも無意味な行為だけど
 とっくに死んでしまった人たちの残した
 とっくに消えてしまった過去の痛みに
 少しばかりの慰めを得てきたのだから
 引き継がれた魂のかけらを残すためにも
 たゆみなく研ぎ澄まして
 自己の卑小な器を乗り越えて
 言葉の慰霊碑をつくりあげねばならない
 粗末な出来なら
 何度でも破壊して
 何度でもつくりなおそう
 “天地は過ぎゆかん、()れど我が(ことば)は過ぎ逝くことなし”
 だれもが死んでいく
 だれの言葉も消えていく
 神の子でもないならなおさらだ
 それでも忘れられないものがあるなら
 永遠なるなにかを信じて
 為すべきことを為さねばならない
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