言葉と音楽

文字数 412文字

 言葉は音楽で
 音楽は言葉であると
 最近はよくそう思う

 夢想的なピアノの音色も
 それはある種の言葉であると
 そう考えた方が
 なおさら好きになれる
 おかしな話だ
 言葉を必要としないから音楽が好きだと
 以前は考えていたはずなのに
 でもいまは
 音楽から言葉を聴き取りたいと
 ひたむきに耳を澄ませている

 そうして言葉にも
 なんてことのない相槌や
 言いよどんだ単語や地名
 祈るような独り言
 そのすべてに
 意味を踏み越えた音楽を感じる

 だからどうだという話でもないけれど
 本を読むことと
 音楽を聴くことに
 与えられた時間の大半を費やして
 あまりにも他をないがしろにしてきた
 その事実を
 後悔する気がさらさら起きないのは
 言葉と音楽こそが生命(いのち)だと
 疑いなく信じきっているからだろう
 神を信じるように言葉と音楽を信じている
 最近のぼくの狂信の内実は
 そんなところだ
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