彼岸へのバス
文字数 581文字
バスに揺られて
彼岸へ渡る
窓外 を流れる
冬枯れの景色
黒衣 の鵜飼 と乗り合わせた
風雪 に耐えて年輪を刻んだ老いた顔
座席に座り
顔のない運転手に問いかける
おれは何回死んだんだ
十五回目です
返答を聞き
黒衣の匠はうなずいて
深々ともたれて瞑目 する
あとは沈黙
バスはガタゴト揺れている
しどけない貞女 と乗り合わせた
ぐるりに合わせて形姿 を変えてきたような輪郭
吊り革を握り
顔のない運転手に問いかける
死んだ子どもを見ませんでしたか
二本前の便 です
返答を聞き
しどけない烈婦はため息をついて
崩折 れそうな姿勢で瞑目する
あとは沈黙
バスはガタゴト揺れている
麗 しき異神 と乗り合わせた
捧げられた供物 を蹴散らしてきた御御足
先頭に陣取り
顔のない運転手に問いかける
崩御 した神はどこへ行くのか
三界 の向こう側です
返答を聞き
麗しき大神 は凍りついて
そよ風に溶けながら瞑目する
あとは沈黙
バスはガタゴト揺れている
彼岸へのバスに
生きた乗客はぼく一人
たどりついた先には
どんな死が待つのだろう
彼岸へ渡る
冬枯れの景色
座席に座り
顔のない運転手に問いかける
おれは何回死んだんだ
十五回目です
返答を聞き
黒衣の匠はうなずいて
深々ともたれて
あとは沈黙
バスはガタゴト揺れている
しどけない
ぐるりに合わせて
吊り革を握り
顔のない運転手に問いかける
死んだ子どもを見ませんでしたか
二本前の
返答を聞き
しどけない烈婦はため息をついて
あとは沈黙
バスはガタゴト揺れている
捧げられた
先頭に陣取り
顔のない運転手に問いかける
返答を聞き
麗しき
そよ風に溶けながら瞑目する
あとは沈黙
バスはガタゴト揺れている
彼岸へのバスに
生きた乗客はぼく一人
たどりついた先には
どんな死が待つのだろう