詩を書きたくない夜がある

文字数 302文字

 詩を書きたくない夜がある
 詩を書きたいような(うず)きがある
 またこの世に
 不要な言葉を逃がしてしまった
 どこかで野垂れ死ぬ無愛想な言葉
 道ばたにある死体を見て
 あれは自分の言葉だと
 確認するのが怖かった
 書かない正当な理由だった
 詩を書きたくない夜がある
 詩を書きたいような疼きがある
 おまえはたしかに詩人だと
 許可をもらったわけではない
 だからこれもまた詩ではない
 捺印をもらった詩ではない
 駆除対象の不出来な言葉
 処分を待っている犬猫のような言葉
 詩を書きたくない夜がある
 詩を書いていい資格はない
 詩を書いていい自由はない
 詩を書いていい理由はない
 詩を書きたくない夜の疼き
 また言葉
 許されない言葉
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