空に墜ちた鳥

文字数 348文字

 死の外形は
 死体しか見えない
 こぼれた涙は
 死の軌跡とわずかに重なる
 時間はただ
 こころを遠くするだけで
 死は過去にならない
 思い出に累積する死
 記憶に憑いて離れない死

 身体がなくなって
 声が消えて
 疑問を忘れて
 恋しかっただれかは
 塵でしかなくて
 鳥が見せない死体は
 空に墜ちて
 曲がり角の先には
 神なんていなくて
 道に塗られた色は
 運命より鮮やかで

 こぼれた涙が嘘でないなら
 死は哀しいと
 自分に言える
 納得できない残余の情は
 胸に哲学の枷をはめて
 自分を少し厭わせる

 嫌いな他人が死んだときに
 後ろめたさを感じたから
 自分は善人だ
 などとは
 信じない方がいい
 その信仰は裏切られるから

 空に墜ちた鳥の死体が
 墓場の月に漂着する
 その休息は見えない
 魂の外形はまだ
 観測された記録がないから
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