哀しみは血友病

エピソード文字数 401文字

 いつになったら
 この胸の痛みから解放されるのだろう
 後ろ向きにも程がある
 前向きになれたことがない
 被造物に与えられた喜怒哀楽のうち
 哀しみだけが際限なく肥大する
 そんなうつむいた人種にぼくも属している
 最初の傷
 最初の嘆きは
 いまもこころの片隅で血を流している
 ぼくの哀しみは血友病(けつゆうびょう)罹患(りかん)している
 時間はすべてを癒やしてくれると
 魂をほじくる医者がありがたいご託宣(たくせん)を述べても
 十年以上前の傷が
 いまもぼくの暗さを規定しているように
 あのときの気まずい仲違い
 あのときの寂しい死
 あのときのぼんやりした別れ
 すべての傷口がいまも痛む
 じくじくと赤く(にじ)んでいる
 ぼくは頑なな病人だ
 癒えることを(がえ)んじない永遠の患者だ
 薄明と薄暮に傷をいじくって
 絶対に忘れてなるものかと
 涙の代わりに血を流し続ける
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